青森県コンクリート診断士会



コラム
 会員の寄稿文などを紹介します。

 音道 薫 氏(日本コンクリート工学会「コンクリート工学」2023.3月号 寄稿文
「企業が持続可能であるために」
 上北建設鰍ヘ、青森県南部地方の内陸の十和田市に所在する。十和田市は、人口約6万人弱と過疎化が進む地方都市であるが、昔から建設業が盛んな地域でもある。現に、県内の完工高トップ10に十和田市の建設会社が常に4社は入る状況である。弊社はトップ10常連ではないが、10番付近を前後する会社である。
 上北建設に入社した時の印象は先輩方の技術力が高く、顧客に対し親切丁寧に接するという印象であった。当時は、元請工事が9割程度であったと記憶しているが、今では元請・下請工事は半々の割合である。また、土木部は昔から舗装工事を得意とし、10数年前から橋梁下部工などの重要構造物の生コンの打込みも行うようになり作業員は著しく成長し、どこに出しても恥ずかしくない丁寧な施工を行えるようになった。このような背景から、弊社は時代の流れに適応しながら現在に至っていると感じる。
 「変わらないことが安定」と言われた時代もあったが、現代社会においては、デジタル技術の進化によって物凄いスピードで変化している。今のこの状況を考えれば「変化こそが安定」と言える。逆に変化に対応できないのは、衰退を意味すると考える。先に述べたように、弊社は時代の流れに適応しながら現在に至っていることから、これからも上手く変化に対応できるよう一人ひとりが努力を惜しまず成長し、持続可能な企業であり続けたいと思う。

 後藤 琢磨 氏(日本コンクリート工学会「コンクリート工学」2023.2月号 寄稿文
「コンクリート診断士について思うこと」
 コンクリート2次製品メーカーの設計部門に勤務していて、自己研鑽のためにも何か資格を取得しようと考え、会社の業務に最も関係が深いコンクリート診断士を目指した。当然だが簡単に合格できるようなものではなく、6年前に3回目の受験でようやく合格できた。
 弊社では自社開発の特殊製品が大半を占めるため、設計部門では、製品が現場に適合するかどうかを、図面に落とし込んだり構造計算を行うなどして検討・確認し、営業部門と連携しながら発注者/設計コンサル/施工業者などの顧客へ提案するのが主業務となっている。そのため、コンクリート診断士の主業務であるコンクリート診断については普段の業務で行うことはほぼ無く、せいぜい納入現場で不具合が発生したようなときに検証を行うぐらいである。このような職場環境であったこともあり(自分の努力不足が一番の要因ではあるが)、コンクリート業界にいたにもかかわらず、コンクリートの基礎的な知識が不十分だったため初歩的なところから勉強し直さなければならず、この点ではだいぶ苦労をした記憶がある。ただ、この受験勉強のおかげでコンクリートの基礎知識を改めて見直し、頭の中を整理することができて、その後の業務にも大いに役立っているので、診断士を目指してよかったと今では思う。
 このような経緯で取得した資格ではあるが、正式な診断業務ではないが、製品や構造物に発生した不具合に関する協議の際、診断士としての立場から発言を求められることが多い。そこに顧客からのコンクリート診断士に対する大きな期待というものを常に感じているが、その期待に応えるためには日々の技術研鑽が欠かせない。幸い、自分が住む青森県には青森県コンクリート診断士会があり、会員の皆さんと交流を図るなどして情報収集に努めている。コロナ禍の中、技術講習会など対面で行われることが少なくなっているため、会員相互の交流としては今ひとつ物足りないと感じている。コロナを気にせず交流できる日が早く来ることを期待している。

福士 知史 氏(日本コンクリート工学会「コンクリート工学」2021.2月号 寄稿文
「コンクリートの世界観」
 私は24歳の時に、青森県五所川原市に技術職員として採用されました。建設関係の職に進んだきっかけは、八甲田山に架かる城ヶ倉大橋をみて、感動を覚えたからです。建設途中から、何度も見学に行くような橋マニアな私でした。完成後に、橋を通ってみると、1分程度で通過する橋でしたが、設計者、職人のロマンが凝縮されていると感じてやみませんでした。これにより、将来は土木関係に進むことに決めました。
 入りたての当時、日々の業務においては、コンクリートと接する機会はそれなりにありました。しかし、この程度の知識のままでは業者になめられしまうと思い、難易度が高いと噂されているコンクリート診断士を受験しました。
 受験最初の年は、全く中身が理解できなくて、試験中のイメージとしては、「戦場のど真ん中で丸腰の状態」といって良かったと思います。まったくわからなかった。
 これは手厳しいと思い、コンクリートの製造過程から知識を鍛え直さないといけないと思い、2年目にはコンクリート主任技士、診断士をダブル受験して主任技士のみ合格しました。主任技士の勉強は無駄ではなく、3年目には診断士も合格しました。
 その時の手応えはあったので、合格するかなと思いました。
 コンクリートの劣化状況はいろいろあり、複合的な要素が複雑に混ざり合ったりして難しい時もあります。しかし、経年劣化するコンクリートと向き合うことで、建設当時の景気の状況や、設計者、鉄筋工やコンクリートの製造者、打設時の職人等と、時空を超えて対話ができるような気がします。この場面で、なぜ手を抜いたのかなとか、この時、こんなトラブルがあったのでは?などと想像を膨らませます。これからは、プレハブ鉄筋や、プレキャスト製品、ICT施工に移行していくと考えられるため、それらへの対応が求められると考えます。
 最後になりますが、青森県コンクリート診断士会のPRです。現在は、会長を始めベテラン技術者が多数在籍しているため、研修会や、お酒を飲みながら議論を交わすことで、さらなる技術研鑽の場となっております。今後ともよろしくお願いいたします。

原田 秀継 氏(日本コンクリート工学会「コンクリート工学」2020.12号 寄稿文
「真心測定器」
 素敵な構造物を造りたい、造って欲しいと希望しながらお客様の要望に沿った生コンを製造したいと思って毎日、業務に励んでいるつもりでいます。でも、顧客の要望全てに(値段、配車台数、時間、人員、品質等)応えることはなかなか難しい。工場側でも係による打ち合わせを徹底し、顧客との事前打ち合わせも行って、ある程度納得してもらって納入しているつもりですが、品質に関しては、毎日毎日、工程検査、製品検査、現場受入検査等で一日に数回生コンと顔を合わせていますが、毎回表情が違う感じがします。今日は色つやが素敵だと思えば空気が多めだったり、次はちょっとガサツな感じがしたり、良い感じの物がなかなか続けて出来上がらない。
 ほぼ同じ数量の水、セメント、骨材、混和剤を混ぜているのに何故なのでしょう。
 水の品質はほぼ変わらないと思いたい。セメントと混和剤はメーカーの成績書によればほぼ変わらないはず。骨材も毎週、毎月の試験でほぼ変わらないはず。それを同じ数量混ぜても毎回表情が変わる。何故だろう。あとは作る側の気持ちの問題なのか?
 今までも心を込めて作っているつもりだが、もっともっと心を込めて作ればよいのか?気持ちが足りないのか?
 誰か真心測定器を開発してくれないだろうか。ボタンをポチッと押せばその製品の真心度が表示されるやつがいい。測定値の規格値は下限はあるが、上限は無制限で。もちろん毎日毎回測定し管理図も記入する。天気や外気温度との相関もあるかもしれない。家庭の事情や職場での関係でも下限を外れる可能性があるかもしれない。いま流行りの新型コロナウイルスの心配によるバラツキもあるかもしれない。また、製造係、出荷係、試験係、資材係、輸送係等それぞれの真心度も違うと思う。でも、良い生コンが出来るようにと心を込めることはできる。しかし、生コン製造側の真心だけでは良い構造物は出来ないので、現場側でも力を合わせて真心込めて素敵な構造物を造っていただきたい。
 いずれにしても、これからも真心込めて、誠実に生コンを製造して行きたい。

原子 一磨 氏(日本コンクリート工学会「コンクリート工学」2012.2月号 寄稿文)
 コンクリート診断、橋梁補修設計などを通して、構造物のでき方や履歴・その時代などを想像する事が多くなりました。
 私は、「コンクリートは生き物」と考えることができると思います。人間が病気にならないためには、病気の早期発見・早期治療、そして何よりも病気にならないために体を鍛えておくことが大切です。
 例えるなら、@ 早期発見→ 定期点検や緊急点検など、A 早期治療→ 早い段階での補修や補強によりライフサイクルコストを低減する、B 身体の鍛錬→ 良質な施工・材料により丈夫に建設(誕生)させ、適切な時期に予防保全対策を講じることが必要となります。このように考えると、親近感が生まれてきます。
 建設時の社会状況、目的、補修などの履歴、環境、利用状況、周辺の地形などそれぞれの個性をよく把握し、より適切な診断と、将来を見据えた補修や補強、予防保全の提言ができるよう技術の向上を図っていきたいと思います。

佐藤 育英 氏(日本コンクリート工学会「コンクリート工学」2011.6月号 寄稿文)
 私は生コン工場に勤務しており、コンクリート診断士は4年前に取得しました。資格取得以降診断業務に関しては、ほぼ皆無ですが、診断士を目指し、また合格することができたことによって多くの得るものがあったと思っております。これまで、コンクリートを製造・施工・硬化後と断片的に捉えていた感がありましたが、コンクリートのひび割れや変状・不具合を学ぶにつれ、構造物の形状は?立地・環境条件はどうか?それによる留意点は?効果的な対策は?など様々な思考でコンクリート全体を観るようになったと思います。
 また、資格取得後に参加している青森県コンクリート診断士会の勉強会・会合等では、様々な職種の有資格者の方々の意見を聞くことができ、私にとって学ぶべき大変貴重な時間となっております。同時に自分の力不足も痛感させられますが、的確な診断業務ができる診断士を目指して、日々努力を積重ねて参りたいと思っております。

奈良 裕 氏(セメント新聞「あんぐる」H23.5.16号 寄稿文)
「一路青森」
 東日本大震災で被災された皆様には心よりお見舞い申し上げ、亡くなられた方がたに対しご冥福をお祈りいたします。
 いまだ東北新幹線が完全復旧にはなっていませんが、東北を元気にするためにも、青森まで皆様においで願いたいと思っております。そこで青森の魅力の一端をご紹介いたします。
 観光地として世界遺産にも登録されているぶなの原生林の白神山地、四季折々の十和田湖、高山植物の宝庫の八甲田山、信仰の山津軽富士と言われている霊峰岩木山、縄文遺跡では国内最大規模の三内丸山遺跡、太宰治の生家金木の斜陽館、桜祭りで有名な弘前城、祭りとすれば、燃えるような夏祭りで跳人が乱舞する青森ねぶた、高さが22mの巨大ねぶたの五所川原の立倭武多、三国志などの武者絵を題材にした巨大な扇形の弘前ねぷた、山車が有名な八戸三社大祭など魅力あふれております。
 また、八甲田の中腹にある160畳の混浴千人風呂の酸ヶ湯温泉、浅虫温泉郷、大鰐温泉郷、黒石温泉郷、岩木山の麓にある百沢温泉郷、嶽温泉郷などの温泉も豊富にあります。
 次に食べ物では、日本一の生産量のりんご、ほたてで代表される陸奥湾の魚介類、たらの内臓を使ったじゃっぱ汁、八戸せんべい汁、うにと鮑のお吸い物のいちご煮、黒石のつゆ焼きそば、青森の生姜みそおでん、味噌カレー牛乳ラーメンなどを楽しめます。また、津軽三味線も居酒屋などで堪能できます。
 ぜひいろいろな魅力がいっぱいある青森に新幹線でおいで下さい。

奈良 裕 氏(セメント新聞「あんぐる」H23.4.4号 寄稿文)
「九戸政実に思う」
 あまり知られていない九戸政実という戦国武将を高校生の頃から好きでした。戦国時代、歴史に逆らった武将で反骨の武将と云われており、歴史に流されること無く、「我はここにあり」という態度を示した武将として好きでした。
 奥州南部氏の一族で、その時の南部氏の当主に刃向かって、最後は豊臣軍の軍門に降り、滅亡した武将です。時代は天正十九年(1591)の頃であり、豊臣秀吉が小田原の北条氏を滅ぼしたすぐあとの頃で、場所は今の岩手県二戸市周辺です。
 反乱を起こした九戸政実を南部氏だけでは征伐できずに、豊臣秀吉に応援を依頼し、豊臣秀吉は九戸討伐軍(総大将豊臣秀次)約十万の軍勢を派遣しました。対する九戸軍はわずか五千の兵力しかなかったが、九戸城を囲まれてから、約半月間持ちこたえて、最後は九戸討伐軍の大将蒲生氏郷・総奉行浅野長政等に九戸一族の助命のための和睦ということで騙されて降伏したのだが、九戸政実は一言の弁明も許されず処刑され、かつ城に残った者は非戦闘員の婦女子も含めて全て皆殺しにされた。
 敗者ですので、記録が残っておらず、その実際のことはよく分かりませんが、この九戸政実については、「炎立つ」で有名な作家高橋克彦氏の「天を衝く」副題「秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」の小説に詳しく書いてあります。小説ではありますが、ほぼ史実に近いものと私は理解しております。私が涙無くして読まれない小説のひとつです。

奈良 裕 氏(セメント新聞「あんぐる」H23.2.21号 寄稿文)
「ハマっているもの」
 いまハマっている書籍のひとつに「佐伯泰英氏の小説」があります。皆様ご存知の通り時代劇の文庫本のベストセラー作家です。
 いろいろなシリーズがあり「居眠り磐音 江戸双紙」現在三十五巻「夏目影二郎始末旅」現在十四巻「古着屋総兵衛影始末」現在十一巻「交代寄合伊那衆異聞」現在十三巻「密命」現在二十四巻「酔いどれ小藤次留書」現在十四巻「吉原裏同心」現在十三巻「鎌倉河岸捕物控」現在十一巻等が発刊されています。
 特にその中でも「居眠り磐音 江戸双紙」に一番ハマっております。この「居眠り磐音 江戸双紙」は平成14年の発刊以来すでに三十五巻、累計一千二百万部を売り上げており、昨年はNHKの土曜時代劇でも放映されました。
 心優しく穏やかで思いやりのある青年武士の江戸下町の人々との温かい交流・鮮やかな剣さばき・男女の心の機微等を織り込んだ痛快長編時代小説です。本当に剣あり、恋あり、涙ありの小説です。いま現在三十五巻ですが、まだまだ簡単に終わりそうになく、今後の展開を期待してしまいます。
 佐伯泰英氏の完結しているシリーズは「古着屋総兵衛影始末」(新シリーズが1月より再開)だけで、その他のシリーズもまだまだ続くようになっており、佐伯泰英氏の文庫本だけで、私の本棚がいっぱいになりかけております。今後もますますハマっていくことになると思っております。
 ぜひ興味のある方はご一読下さい。

奈良 裕 氏(セメント新聞「あんぐる」H23.1.17号 寄稿文)
「ちょっとした注意」
 
この「あんぐる」に私のような者が執筆していいのかという疑問がありましたが、折角の機会であり、光栄ですので、厚かましく引き受けることにしました。
 これまで四十年間生コンに携わり、昨年の春に退職して一応「悠々自適」?の生活になりましたが、これまでの生コンでの経験と、コンクリート診断士になってから構造物のひび割れ等の診断で現場に行っている経験から、特に感じていることの一つにコンクリート打設に関して施工者の方々がもう少し注意を払って欲しいということです。
 どうも現場の監督さん方の多くは、生コンは電話をすれば来るものであり、打ち込みはポンプ業者に任せておけばという感じの他人任せで、コンクリートの打ち込みに注意を払わないことがあり、それがあとで問題となることが多くなっています。打設の時点で注意しておけば、あとで何とも無いのにということが非常に多いと感じています。
 現場の監督さん方の仕事が多くて、そこまで手が廻らないのが現状でしょうが、ちょっと関心を持ち注意することで改善できることが多いと思っています。コンクリートの打設に関して配筋・かぶりの確保・型枠の設置・打込順序・打継ぎの処理・バイブレーターのかけ方・ブリーディングの処理・こて均し等関心を持つ箇所はいっぱいあります。ぜひ、コンクリート打設の際にはコンクリートに関心を持ち、注意を払っていただきたいと思っております。
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